55点
映画としては比較的伝わりやすいですし、メッセージを受け取りやすいのですが、人に勧めるほど面白い映画でもないです。
ただ、僕みたいな根が陰キャでこじらせてる人は共感する部分が多くて面白いかもしれないと思いました。

とにかく松岡茉優が可愛い映画ですね。
『勝手にふるえてろ』を評価する
今年もたくさん映画を観ている僕の素直な評価です。
総合評価 | |
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ストーリー | |
映像 | |
音楽 | |
キャスト | |
眠くなかったか |
ストーリー自体に面白さはそこまでありません。ただ、セリフの1つ1つにクスッとくるような場面が何度かありました。そこはお気に入りです。
映像に関しては、少しネタバレにもなるのですが、松岡茉優演じる良香が使う視野見(しやみ)という目の端で物を見る映像は面白かったと思います。
音楽は微妙です。松岡茉優さんの歌声は、以下のYouTubeを観た時に良いと思っていたのですが、期待しすぎていた気がします。
キャストに関しては最高です。松岡茉優さんが可愛いですし、他の人たちも役に合っていた気がします。特に松岡茉優さんに関しては、とても長いセリフが多かったので凄いと思いました。
総合評価は55点ですが、まるでタイ料理のパクチーのように好きな人は好きになる映画だと思います。
観る前のあらすじ

映画を観ようと思っている方は注意です!
映画好きの僕が『勝手にふるえてろ』を解説する←ここからネタバレ
まずは、映画に出てきた主要人物の関係をまとめておきます。
主要なメンバーはこの4人ですが、他にもちょっとイケてる風を出したそうにしていたけど良香に笑われていた出木、高杉君。良香の隣の部屋に住んでて、最後まさかのコンビニの店員と付き合ってたことが発覚したオカリナさんなどが出てきます。
個人的に1番好きだったのはフレディです。最近映画『ボヘミアンラプソディ』を観たばかりだったので最高でした。
キーワードは「認知」と「存在」
この映画を読み解くにはいくつかのポイントがあります。
- 他人から認知されていない良香
- 周りから認知されているがそれを嫌い、良香を認知していないイチ
- 唯一自分を認知してくれているニ
私たちもそうですが、この映画の中では他人に認知されることが存在の証明になっています。つまり、他人から認められていない自分は限りなく絶滅に近い存在です。
『勝手にふるえてろ』は果てしなく登場人物が少ない映画でした。メインの登場人物は以下の4人。
- 良香
- 来留美
- イチ
- ニ
後は名前を覚える必要もないくらいのモブキャラです。良香の親も出てこない上に、出てきたと思ったら良香の妄想だったりしています。
つまり、それだけ良香は周りから認められていない存在でした。陰キャラをこじらせて、周りと合わせることができない自分は、誰にも認知されずに存在していたのです。このシーンは、以下のセリフで特に顕著に表れていました。
10年以上妄想を続けてきたイチでさえ、自分のことを認知していなかったのです。ここで、自分が崩れてしまいました。
唯一の心の支えが自分を認知していないのは、認知症や記憶喪失でパートナーが自分に関する記憶を失ってしまうことに近い悲しみがあると思います。
しかもここは愛ではなく、恋の場面なのでなおさらキツイですね。

人が死ぬのは人から忘れさられた時って、Dr.ヒルルクも言ってますね。
なぜ良香は古代生物が好きなのか
良香が古代生物を好きになった理由というよりも、なぜストーリーで良香が絶滅した古代生物を好きになった描写が描かれたのかという話です。
イチ君と、金髪の同級生が持っているタワマンのベランダで話しているときに以下のようなセリフがありました。
つまり、良香は自分が他の人とは違うということを理解した上、子孫が作れず絶滅した古代生物を自分と重ねていたということです。
ここで言う歪とは、「他人に認知されない自分」のことです。イチ君は同窓会でわかる通りクラスメイトから認知されていましたが、良香は全く認知されていませんでした。
そしてこのシーンは、最後のニとの会話の「俺との子ども作ろうぜ〜」というセリフに繋がります。歪な生物は、子孫を残すことができないからこそ絶滅していきますから。
ちなみに、異常巻きは以下のようなアンモナイトらしいです。
しかも調べてみると、異常巻きのアンモナイトは日本に多いんだとか…。確かにどう見ても異常な形をしていますね。
良香が家にアンモナイトの化石を置いていたのは、通常をそばに置いておきたかったからとも言えるでしょう。そう言った意味でいうと、良香も通常だと思います。
勝手にふるえてろの意味とは
端的に言うと、「あなたを愛してはいない。けど認知する。」ってことだと思います。
『勝手にふるえてろ』の中では愛と好きが全く違います。これは僕も同じような感覚を持っているのですが、あなたはどうでしょうか。
愛 | 好き |
---|---|
自分を犠牲にする覚悟がある。 | 自分を犠牲にする覚悟はないが、認めている。 |
この考えをベースにして考えると、「勝手にふるえてろ」と言うセリフは愛ではないと思います。愛だったら、寒くて震えてるパートナーを見て「ふるえてろ」なんて言わないからです。
つまり、これは愛ではありません。しかし、好きではあるのです。なんと回りくどい言い方ですが、今までの良香からすると相当の進化な気がします。
さらに、最後のシーンにこんなセリフがありました。
ここで初めて良香はニのことを霧島君と呼んだのですが、それまではずっと霧島君と呼んでいませんでした。
名前を覚え、呼ぶことで、相手を認知していることを言います。この映画の中で良香が認知してい他のはイチと来留美の2人だけでしたが、ここで初めて霧島を認知することになります。
他はもう全く認知していません。出木杉もフレディもオカリナ(例外)も、しかし霧島はここで良香に認められることになりました。愛までは遠いかもしれませんが…。
赤い付箋が染みるシーンの意味
赤い付箋に関して少しまとめてみました。
- 良香が胸に赤い付箋を付けていたのがきっかけでニは良香が気になるようになった
- 良香は赤い付箋のことを全く覚えていない
- クリスマスプレゼントが指輪かと思いきや赤い付箋
良香が最後に赤い付箋を左胸に付けていた理由は、霧島を認めたからです。認めたと言うよりも、霧島がしてほしいことをしてあげたのかもしれません。
それまでは霧島が勝手に覚えていた赤い付箋ですが、良香がそれを体現してあげることでお互いに共通の思い出になります。
その赤い付箋が良香の胸から落ちて染みるシーン、あれは2つの意味があったと考えることができます。
- 良香が通常になること
- これから起きる夜のこと
これ以上を解説するのは野暮かもしれません。
印象に残ったシーン・セリフ
この映画の印象に残ったシーンやセリフをまとめておきます。
タワマンに入る時にニ(霧島)が付いてくるシーン
今考えると、あのシーンは伏線だった気がします。関係は全て一方通行でした。
よく見返してみると、イチはニだけではなく良香のことも無視しているように見えます。と言うか見えてさえいないのでしょう。
良香からすればニを邪魔者として扱っているだけですが、イチはニだけではなく良香のことすらどうでも良いのです。
イチのあの態度は、世の中全てがくだらないように感じているのかもしれません。

イチからしたら中学生の頃、視野の端にいる陰キャラだったのでしょう。
ニ(霧島)との卓球シーンとその後
イチに自分が認知されていないことがわかった後にニ(霧島)と卓球をするシーンですが、少しずつ良香が霧島に心を開くシーンでもあります。こじらせたメンタルが、少しだけほぐれたような感じです。
何より、笑うんですよ。松岡茉優が。とても可愛いシーンです。
そしてそのシーンの後、あれだけ大事にしていたアンモナイトの化石に向かってぶっきらぼうにネックウォーマーをかけるのも印象的でした。
それまでは通常のアンモナイトを大事にしたい気持ちがあったものの、イチに認知されてないことがわかり、霧島が自分を思ってくれてることがわかったシーンでした。
お風呂で紫谷のSNSを見るシーン
同窓会のために作った紫谷のSNSで「死にたい。もし痛くなかったらまじで死んでる」と呟いたSNSを見ているシーンです。
それまで良香はこんなことを言っていました。
このセリフ、陰キャラあるあるなんです。SNSに自分の思い出とか考えていることを投稿するのって勇気がいると思っていますし、もし炎上したりしたらやばいと思っています。
けど、紫谷を装ったアカウントでは自分の感情を惜しげもなく呟いています。つまり、本当は認められたいんです。認められていることを実感したいんです。生きていたいんです。
SNSは承認欲求を満たすツールですが、良香も承認欲求があるってことです。むしろ承認欲求の塊かもしれません。
『勝手にふるえてろ』のまとめ
僕は陰キャラで友達がいないので、この映画はとても共感する部分が多かったです。
でも、映画仲間におすすめするほど面白い映画でもありません。松岡茉優が好きなら見た方が良いくらいの映画だと思います。
ただ、現在恋愛中の人や恋愛について日頃から考えている人は見た方が良いと思います。好きと愛の違いを知ることができるからです。簡単な話ではありませんけど。

人を愛するって自己犠牲が伴うからね…。
制作年 | 2017年 |
時間 | 1時間57分 |
監督 | 大九 明子 |
イチ「いやしかし、異常巻きをホタテのヒモって、上手いこと言うね君。」
良香「イチ君。イチ君って、人のこと君って呼ぶ人?」
イチ「…。ごめん。名前何?」