映画『鑑定士と顔のない依頼人』のネタバレと解説|伏線の数と張り方がヤバすぎた

映画『鑑定士と顔のない依頼人』のネタバレと解説|伏線の数と張り方がヤバすぎた洋画

 80

最後の20分間、ずっと興奮して考えっぱなしの映画でした。正直、こんなに面白い映画をなぜ今まで観てこなかったのだろうと思ってます。

もっと早く観たかった…

『鑑定士と顔のない依頼人』を評価する

今年もたくさん映画を観ている私の素直な評価です。

総合評価
ストーリー
映像
音楽
キャスト
眠くなかったか

ストーリー構成は完璧でした。まさかあんなラストが待っているとは思っていませんでしたし、今までの積み重ねからの裏切りが最高です。

映像に関しては、2013年の映画ということもあって普通に綺麗でした。音楽はそこまで気にならなかったので、一般的な映画と同じような感じだと思います。

キャストですが、オールドマン役のジェフリーラッシュは好きだったのですが、クレア役のシルヴィア・フークスがそこまで可愛いとは思えなかったので星3にしています。このブログは個人的なものなので、気にしないでください。

眠気は全くこなかったです。時間も2時間11分なので一般的な映画と同じようなものです。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』とかはかなり長い映画なので、眠くなってしまったのですが…。

映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のネタバレ解説|まさかの実話?
年間200本の映画を観る私が『ウルフ・オブ・ウォールストリート』をネタバレ解説しています。ペンの名言やまさかの実話説についても解明してみたので、まだ観ていない方もすでに観終わった方もご覧ください。

観る前のあらすじ

主人公ヴァージル・オールドマンは美術鑑定士・オークションの競売人として成功を収めていたが、女性と話すのが苦手で女性を知らない人だった。彼には、女性の肖像画を集めて自身の隠し部屋に飾るという気持ち悪い性癖があり、自身が開いているオークションで有名絵画を偽物と称して仲間であるビリーに格安で落札させ、その後自身でビリーから買い取っていた。そんなある日、オールドマンの元にクレアという人物から「両親が亡くなったから、家にある家具や美術品をオークションに出して欲しい」という依頼が入った。家具・美術品を受け取りに行っているうちに、クレアが広場恐怖症のため顔を見せないことが発覚した。オールドマンは顔の見えない、声しか聞こえないクレアに興味を抱いてだんだん惹きこまれていく。機械職人でありながら女好きのロバートに相談し、クレアへの興味が少しずつ大きくなっていくオールドマンだったが、ロバートもそんなクレアに興味を持ち始めていた…。
ここからは作品のネタバレになるので、注意してください。

まだ映画を観てない人は気をつけて!

作品を丁寧に解説する←ここからネタバレ

『鑑定士と顔のない依頼人』の図解1

表の関係としていますが、オールドマンが思っている関係と言うこともできます。しかし、オールドマンが自らの絵が盗まれるまでは気づかなかった裏の関係もあったのです。

『鑑定士と顔のない依頼人』の図解2

オールドマン以外の人たちは、相当な計画を練って盗みを働いたと言えるでしょう。絵を盗んだ動機はビリーが画家としての人生をオールドマンに潰されたことしか考えられないので、クレアを始めとする他の仲間たちは絵画or絵画を売却することによる金銭目当てでオールドマンを騙していたと言えます。

強い恨みを持っていたビリーがオールドマンの持つ絵画たちを盗むことを計画し、クレアを始めとする実行役に演技をさせました。今考えると、最初にオールドマンがクレアを見たときの行動はなんだか”あえて魅せている”感があってゾクゾクします

オールドマンに演技していた実行役は4人いました。それぞれの仕事もまとめておきます。

  1. 資産家令嬢のクレア
    1番重い役割。そもそもオールドマンが「あの女はあまり美しくない」と思っていたらどうなったことやら。
  2. クレアの両親の使用人だったフレッド
    2周するとわかるが、使用人のくせにクレアの両親の仕事を知らないとか、設定が少し甘めだったと思われる。おそらく使用人の経験など全くなく、ただそこらへんにいた人を選んだのかもしれない。
  3. 機械職人のロバート
    オールドマンの恋愛指南役としての役割だった。オールドマンからの信頼が厚かったので、ビリーは相当の金を積んで雇ったのだろう。
  4. ロバートの恋人役であるサラ
    こいつだけはほとんど仕事をしてない。唯一の仕事は「最近ロバートがクレアっていう女性の話ばかりするの」とオールドマンに相談したことくらい。

続いて報酬ですが、オールドマンの最後の仕事に持ってきた絵を日本円で換算すると16億2,500万円というやばすぎる金額でした。

そしてあれだけの絵を揃えていたとなると、軽く1,000億円は超えていたでしょう。おそらく配分は以下のような感じになるはずです。

 報酬
ビリー500億円
クレア250億円
ロバート200億円
フレッド25億円
サラ25億円

フレッドやサラのあのふざけた演技で25億円も貰えるなんて、なんて美味しい仕事なのでしょう。こんな仕事があるなら誰かこっそり教えてください。

オールドマンは性癖で絵を集めてたけど、金額がヤバすぎると思う

今考えるとあの7つのシーンが伏線だった

ラストシーンを観て、2周目に入ったからこそわかった伏線のシーンをまとめておきます。リンゴで言う蜜の部分のように、この映画の1番美味しいところです。

ビリーの才能についてのシーン

ビリーの才能についてのシーン

ビリー「残念なのは俺の絵の才能を君が一度も認めなかったことだ」

オールドマン「絵が好きなだけでは一流にはなれん。君には”内なる神秘性”が欠けている」

このシーンは、最後にオールドマンからお金を貰ったときのビリーの顔がとても印象的でした。一流の鑑定士であるオールドマンがビリーの才能を認めていれば、おそらくビリーは画家として生きていくことができたのでしょう。

しかし、ビリーはオールドマンの部下のような仕事で食っていたのだと思います。”内なる神秘性”とかいう抽象的な言葉で丸め込まれているのは、アートの世界ならではのものだとも言えるでしょう。

オールドマンの”最上の出品物“を買い取ることだけが仕事で、他人に良いように使われながら惨めに生活していたことを考えると、オールドマンに対する恨みは相当大きなものだったことが考えられます。

初めてクレアの邸宅に行くシーン

初めてクレアの邸宅に行くシーン

フレッドがオールドマンに邸宅を案内するシーンですが、今考えるとおかしな部分が多すぎます。

  • 流石に廃墟すぎる違和感
  • 両親以外の親族が全くいない
  • 使用人のフレッドが部屋数を把握していない
  • 両親の使用人だったのになぜ今も管理してるのか
  • 使用人がいるのに蜘蛛の巣が張ってる

両親が亡くなってから1年ほどと言っていましたが、美術品を取り揃えている割には家が古すぎると思いませんか?

さらにここでは、フレッドの甘い設定が出てしまいます。オールドマンが部屋数を聞いた時に「数えたこともない」と言っていましたし、一人娘の仕事を聞くと「私は両親の使用人でした」と言っていました。

両親の使用人だったのに、なぜ今も管理しているのか、なぜ私は映画を観ている時に気づかなかったのか…。

拾った機械からヴォーカンソンの名前が出た時

拾った機械からヴォーカンソンの名前が出た時

よく考えると辻褄が合いすぎるシーンでした。J.ヴォーカンソンと呼ばれる18世紀の機械人形製作者の名前が出てきた後に、オールドマンが言いました。

「彼について卒論を書いた」

おそらくこれはビリーが知っていた情報だと思われます。ヴォーカンソンについて卒論を書くほど崇拝していたオールドマンに、クレアの邸宅に通わせる別の理由を与えたのです。それはロバートのセリフにも出ています。

「全ての部品が揃えば僕が再現してみせる。同じ場所にあるはずだ。80%揃っていれば、残りの部品は僕が作れる。」

どうしてもオールドマンにクレアの邸宅に行かせたかったのがわかります。まぁ200億円がかかっていますからね…。

ここまで観ただけでも、ストーリーがかなり作り込まれていることがわかるでしょう。

覗いてる時にクレアが他の人と電話するシーン

覗いてる時にクレアが他の人と電話するシーン

クレアが他の誰かとオールドマンについて話をしているシーンです。

クレア「服装は独特だけど素敵な人よ。信頼できるわ。」

ク「なぜ?嫉妬してるの?私に恋?まさか それは違うわ。病気がきになるみたい みんなそう。」

この後携帯を落として必死で外に出るシーンにつながるのですが、そもそもあれは誰とも電話していなかったと思われます。まるで、営業マンが電話が来て会社に戻らないといけない事態が起きた感じです。

他の男がいると思わせて、クレアを自分の女にしたくなる心理を突いたシーンですが、あの筋書きは誰が考えているのでしょうか…。

もしビリーがここまで考えて計画しているのだとしたら、そもそも画家としてじゃなくても生きていけた気がしますね。

人が持ってる物は欲しくなる心理です

クレアが家からいなくなるシーン

クレアが家からいなくなるシーン

これは私の予想ですが、おそらくクレアを見かけたと言っていたあの青年もグルです。たまたま向かいの家から出てきた女性をあんなにも覚えているとは思えません。さらに、周りの友達?との会話が全くないのもおかしいです。

このシーンで1番気づくべきだったのは、あの小さいカフェの女性の「231」というセリフでした。

正直「映画を最後まで観ないとワカらねぇだろ!」と思いましたが、オールドマンがあの数字の意味を聞いていたらビリー達の計画は失敗していたでしょう。

オークション失敗後のビリーとの会話

オークション失敗後のビリーとの会話

このシーン、私は正直意味がわからなかったです。だから、ラストシーンでビリーが首謀者だと気付いた時に謎が深まるばかりでした。その会話がこちら。

ビリー「人間の感情は芸術品と同じ。偽造できる。まるで本物に見える。だが、偽りだ。」

オールドマン「偽り?」

ビ「何事も偽装できるのだ。喜び 苦しみ 憎しみ 病気 回復 愛さえも。」

今から絵を盗もうと思っている相手にヒントを与えているようなものですが、なぜこんなことを言ったのか理解ができなかったです。可能性としては以下のものが挙げられます。

  • ビリーへの信頼感を高めるため
  • 確実に盗めることを確信しているため
  • オールドマンに少し同情してきたため
  • ゲームとして遊んでいるため

可能性が高いのは「確実に絵が盗めることを確信していること」ですが、実はこの後のシーンで理由がわかりました

初夜の後のロバートとのシーン

初夜の後のロバートとのシーン

個人的に印象に残ったセリフは、ロバートが言った「芸術品の贋作に本物が潜むなら、偽りの愛にも真実が」です。

ここで確信しました。先ほどのビリーとの会話は、ロバートにフォローさせるために必要だったセリフだと思います。

ここでも、1度疑わせてその後で自分を納得させるような解釈をするように仕向けていると考えられます。1度別れたカップルがもう1度付き合うと仲が深まっているようなものです。

ビリーもクレアもロバートも、メンタリスト並みに心理学を使う輩ですね。

『鑑定士と顔のない依頼人』のまとめ

伏線を張りまくって、一気に回収された…
なんて良くできたストーリーなんだ…

ラストシーンをハッピーエンドと取る方もいれば、バッドエンドと取る方もいます。その理由は「いかなる贋作の中にも本物が潜む」という機械人形のセリフです。

クレアからの愛が偽物(贋作)だったことはオールドマンもわかっているのですが、その贋作の中に本物が潜んでいたのかどうかはわかりません。

しかし、ラストのカフェのシーンで「連れを待っている」と答えたオールドマンの中では、クレアはきっと自分を愛してくれていたと思っていることだと思います。

深い映画です…。

鑑定士と顔のない依頼人の画像

制作年2013年
時間2時間11分
監督ジュゼッペ・トルナーレ